結論から言うと、出っ歯をマウスピース矯正のインビザラインで治すことは十分可能です。

当院でもこれまで数多くの出っ歯の患者さまをインビザライン矯正で治療してまいりました。ただし、どんな矯正法にも向き・不向きがあり、すべての出っ歯のケースでインビザラインを適応できるわけではありませんので、その点はご注意ください。

そこでまずマウスピース矯正のインビザラインで歯が動く原理から理解していきましょう。

インビザライン矯正は、透明な樹脂製のマウスピースを装着し、適切な間隔で交換していくことで歯並びを改善する方法です。

それだけはインビザラインで歯が動く原理がよくわかりませんよね。例えば、インビザラインは複数枚のマウスピースを患者さまにまとめてお渡しすることになるのですが、正直すべて同じものに見えるかと思います。けれども実際は、マウスピース1枚1枚が異なる形をしているのです。

歯を動かしたい方向に力がかかるよう設計されているため、歯科医師が事前に細かく調整しなくてもマウスピースを装着するだけで歯が動いていきます。新しいマウスピースに交換して数日も経過すれば、歯列全体にかかる圧力が緩和され、圧迫感なども消失します。それはマウスピースに備わっていた矯正力が消費されたことを意味します。

マウスピース矯正のインビザラインは、マウスピース（＝アライナー）1枚で動かせる歯の距離は0.25mm程度にとどまります。一般的なワイヤー矯正では、1回の調整で歯を0.5mm程度動かすことが可能なので、インビザラインの方がややゆっくりとした治療になりますが、歯に対して極端に強い力がかかりにくいため、治療に伴う痛みも少なくなっています。

さて、インビザラインで歯が動く原理についてご理解いただけたところで、この矯正法の「向き・不向き」についても考えていきたいと思います。

◎インビザラインは軽度・中等度の出っ歯に向いている

上述したように、インビザラインは比較的弱い力で歯を少しずつ動かしていく矯正法です。そのため、重度の出っ歯には向いていないと言わざるを得ません。前歯が前方に傾いていたり、生えている位置にちょっとした異常があったりすることで出っ歯になっているケースには、マウスピース矯正のインビザラインが向いているといえます。

つまり、軽度から中等度の出っ歯ですね。出っ歯の重症度というのは、精密検査を行ってみなければわかりませんので、ご自身の症状が気になる方はお気軽に当院までご相談ください。ていねいにカウンセリングした上で、希望される方には精密検査を実施します。

次に挙げるような出っ歯の方は要注意で、マウスピース矯正のインビザラインでは治せない可能性が高いといえます。

◎骨格的な異常に由来する出っ歯

出っ歯の原因が骨格的な異常に由来している場合は、インビザラインで治せないことがあります。インビザラインはあくまで歯列矯正であり、歯の位置や傾きの異常を整えることが主な目的だからです。上の顎の骨が突出しているような出っ歯は、基本的に外科矯正が必要となります。具体的には、顎の骨を削るなどして、前歯部の突出を改善します。

◎スペースが著しく不足している場合

出っ歯の症状を改善するためには、前方に傾いている前歯を真っすぐにしたり、後方に引き下げたりしなければなりません。その際、歯列内のスペースが不足していると、十分な処置を加えることができないため、抜歯が必要となります。とくにスペースの不足が著しい場合は、たくさんの歯を抜いて矯正を行うことから、歯の移動距離も多くなるのです。インビザラインは、そうしたケースに不向きであることが多いです。

インビザラインは、抜歯が必要となりにくい矯正法として有名ですよね。

おそらく、皆さんもそうした話を見聞きしたことがあるかと思いますが、なぜインビザラインだと抜歯が不要になりやすいのか疑問に感じている方も多いことでしょう。

インビザラインは、抜歯が必要となりにくい矯正法として有名ですよね。

おそらく、皆さんもそうした話を見聞きしたことがあるかと思いますが、なぜインビザラインだと抜歯が不要になりやすいのか疑問に感じている方も多いことでしょう。

ストリッピングとは、歯の側面を少しずつ削ることで、足りないスペースを確保する方法です。IPR（Inter Proximal Reduction）とも呼ばれる手法で、インビザラインだけでなく、一般のワイヤー矯正でも広く行われています。

“歯を削る”と聞くと、歯の寿命が縮まったり、虫歯になりやすくなったりするなど、ネガティブなイメージがわいてしまうかと思いますが、その点はご安心ください。歯を削る量は片側だけで0.25mm程度にとどまります。

また、“削る”といってもドリルを使うわけではなく、ヤスリのような器具で研磨するような処置となりますので、痛みも伴いません。

歯列の奥には、「大臼歯（だいきゅうし）」という大きな歯が存在しています。この大臼歯は根っこもしっかりしていて、ワイヤー矯正で後方に下げるのは至難の業といえますが、マウスピース矯正のインビザラインであれば、比較的移動しやすいです。

奥歯が後ろに下がれば、出っ歯を後方に引き下げるスペースが生じますよね。そうすることで抜歯を回避できます。

私たちの歯並びは「歯列弓（しれつきゅう）」というU字型の形態をとっています。前歯があるのは「U」の下の部分ですね。「U」の左右の直線部分を横に広げることでも、足りないスペースを補うことができます。

専門的には歯列の側方拡大と呼び、インビザライン矯正でもそれは可能です。

今回は、インビザライン矯正で出っ歯を治す方法について、東京の東松原さかい歯科・矯正歯科が解説しました。

出っ歯は、重症例でない限りインビザライン矯正で改善することが可能です。

少し難しい症例でも、ワイヤー矯正と組み合わせる方法もありますので、関心のある方はいつでもお気軽に当院までご相談ください。