ここまで、インビザライン矯正に伴うリスクについて解説してきましたが、以下の点に留意することで治療の失敗を防ぎやすくなります。

「1日20～22時間」というマウスピースの装着時間は厳守するようにしましょう。これはインビザライン矯正で失敗しないために守るべき最低限のルールです。

例えば、ワイヤー矯正で装置が外れた状態を放置すれば、当然ですが歯は動いていきませんよね。マウスピースの装着時間を守らないことは、それと同義であるとお考え下さい。どんなに精密な診断を下し、最善といえる治療計画を立てても、マウスピースの装着時間が不足すれば、治療も自ずと失敗に終わります。

上述したように、クリンチェックで得られる3Dアニメーションはあくまでシミュレーションであり、実際の仕上がりとは異なることが多いです。

経験豊富な歯科医師であれば、治療を始める段階、もしくは途中の段階で実際の仕上がりのイメージをきちんと伝えてくれますので、コミュニケーションを密にとっておくことが大切です。気になる点があればその都度、歯科医師に質問していきましょう。そうして仕上がりのイメージを歯科医師としっかり共有することで、インビザライン矯正の結果に後悔する可能性も低くなります。

インビザラインは、2つの意味で虫歯・歯周病にかかりにくいです。

1つ目は食事の際にマウスピースを取り外せる点で、歯や装置の周りに食べかすなどが残りにくくなっています。2つ目はマウスピース取り外して歯磨きできる点です。ブラッシングの際に装置が邪魔になることがありませんし、マウスピースを手に取って隅々まで洗浄できることは、衛生管理上、極めて有利に働きます。

その特性を活かしてお口とマウスピースのケアを徹底すれば、虫歯・歯周病になるリスクを最小限に抑えられます。

歯の後戻りを防止する保定処置は、動的治療と同程度の期間を要します。

例えば、インビザライン矯正で歯を動かすのに2年かかった場合は、保定装置も2年装着しなければなりません。

少し長い道のりになりますが、保定処置をきちんとやり遂げることで歯の後戻りは防止できます。

インビザラインの実績豊富な歯科医師を選ぶことで、この矯正法に伴うリスクの大半は回避しやすくなります。インビザラインが適さない症例であれば、ワイヤー矯正などの代替案をしっかり提示しれくれることでしょう。

インビザラインに伴うリスクを列挙すると、マウスピース矯正そのものが失敗しやすい治療法のように思えますが、それは誤った捉え方です。

医療行為である以上、どのような治療法にも必ず失敗するリスクを伴うからです。それはマウスピース矯正と比較されることが多いワイヤー矯正も例外ではありません。

ですから、それぞれの治療法のリスクと回避する方法を正しく理解し、自分ならできる、もしくは自分に合ったものを選択することが何より重要といえます。そして、治療が始まったらすべてを歯科医師に任せるのではなく、マウスピースの着脱や口腔ケアなど、自己管理能力が問われる部分は、しっかりとご自身でカバーしていくことが大切です。